院長からのご挨拶
広島大学医学部を卒業後、広大原爆放射能医学研究所(原医研)外科、広大第2外科で甲状腺診を続けてきました。その間、原医研放射線誘発癌研究部門では甲状腺・副甲状腺・睡液腺の病理・発癌の研究を、アメリカのUCLA(カリフォルニア州立大学ロサンゼルス校)、ワズワース病院では加齢免疫の研究を行いました。 甲状腺疾患の診断にあたっては、「多面的甲状腺疾患診断法」と名付けた表、A:甲状腺腫。B:甲状腺腫痛(癌を含む)。C:甲状腺機能。D:自己免疫性甲状腺疾患。E:急性化膜性甲状腺炎、そしてF:先天異常、のいずれに入るかを立体的・総合的に診断します。
甲状腺ホルモンは食べ物をエネルギーに変えるという仕事を担っており、高脂血症、高尿酸血症、糖尿病をコントロールします。その中で肥満・高血圧等を含めた「生活習慣病」を診ることになります。さらには甲状腺ホルモンは体の成長・知能の発育、精神的な躁とうつ、女性の生理・妊娠・出産・更年期症状、そして老化(加齢)にも影響しますので、子供から老人までを幅広く診ることになります。甲状腺の機能異常を整えるのが内科的治療で、主に機能冗進症のバセドウ病と低下症の慢性甲状腺炎(橋本病)が中心となります。 甲状腺癌を含めた腫瘤は外科的な診断と手術が中心です。しかし癌以外の多くの腫瘤は、大きくない限り手術をしなくてよいのが殆どです。腫瘤が超音波エコーで見つかると、エコーガイド下で針を刺して採った細胞を顕微鏡で癌かどうかを診断(穿刺診)します。癌の時はこの穿刺診にエコー診断を加えて術前に「甲状腺・頚部リンパ地図」なるものを用意し、保存的縮小手術か、予防的拡大手術かを決定します。外科手術の対象となる甲状腺癌の多くは予後のよいもので、ガンというとスグに命に係わると思われる方が多いのですが、これと差別化する為に私は「幸せ癌」と呼んでいます。 原爆被爆者の方、皆様お年をとられてきました。甲状腺の病気は家族性にみられることも多いため、お子さん、お孫さんも一緒に来院されるようになっています。広島の原爆被爆者で体得した甲状腺の診断と治療法は、チェルノブイリ原発事故やカザフスタンのセミパラチンスク核実験場での被災者検診にも役立ててきました。近年は福島原発での甲状腺検診に、進歩したエコー診断装置が用いられ、子供のうちから甲状腺癌が発生している事も分かってきました。一生を通しての甲状腺診療が求められる時代に入っています。武市宣雄
医師のプロフィール・クリニック内の様子
院長略歴
- 昭和43年3月
- 広島大学医学部医学科卒業
- 昭和43年4月〜
- 広島大学医学部附属病院研修医
- 昭和44年10月
- 大阪市湯川胃腸病院勤務
- 昭和45年4月〜
- 広島大学原爆放射能医学研究所(外科)診療研修医員
- 昭和46年4月〜
- 同上 医員
- 昭和48年6月〜
- 広島大学原爆放射能医学研究所(放射線誘発癌研究部門・病理)助手
- 昭和52年6月〜53年9月
- アメリカUCLA助手(Research Associate)
- 昭和53年10月〜昭和55年3月
- 放射線影響研究所病理部来所研究員
- 昭和54年4月〜
- 広島大学医学部附属病院・第二外科:医員
- 昭和56年11月〜
- 同上:助手
- 昭和59年3月〜
- 同上:講師併任
- 昭和63年2月〜
- 同上:講師
- 平成7年11月〜現在に至る
- 武市(甲状腺)クリニック院長
- 平成11年7月〜
- 広島大学非常勤講師(原爆放射能医学研究所:疫学・社会医学研究分野)
- 平成14年4月〜
- (同上:放射線システム医学研究部門)
- 平成17年4月〜
- (同上:附属国際放射線情報センター)
- 平成18年4月〜
- (同上:放射線システム医学研究部門)
- 平成22年4月〜
- (同上:放射線影響評価研究部門)
- 平成23年4月〜
- (同上:教養教育本部)
- 平成29年4月〜現在に至る
- 広島大学客員講師(教育本部全学教育統括部)
- 平成29年4月〜
- 広島大学客員教授(大学院医歯薬保健学研究科)
- 平成24年10月〜現在に至る
- 島根大学医学部臨床教授
資格
- 昭和51年7月22日
- 医学博士
- 昭和63年〜平成20年
- 日本内分泌外科学会評議員
- 平成2年〜
- 日本消化器外科学会認定医
- 平成2年〜
- 日本外科学会認定医
- 平成9年〜
- 日本臨床外科学会評議員
- 平成21年〜
- 日本内分泌甲状腺外科專門医
- 平成22年〜
- 日本生涯教育認定医
- 平成27年〜
- 日本外科学会専門医
所属学会
日本外科学会・日本臨床外科学会・日本病理学会・日本癌学会・日本甲状腺学会・日本甲状腺外科学会・日本内分泌学会・日本内分泌外科学会・日本放射線影響学会・日本臨床細胞診学会(広島県支部)・日本消化器外科学会
專門
内分泌(甲状腺)外科・甲状腺・放射線発癌
著書
- 外科基本手術シリーズ5「甲状腺の手術」(へるす出版刊)昭和58年6月発行
- 内分泌外科 標準手術アトラス(インターメルク刊)平成4年1月発行
- 「放射線被曝と甲状腺がん ー広島、チェルノブイリ、セミパラチンスクー」(溪水社刊)平成23年8月発行 他
クリニック内の様子
スタッフ
看護師 8名 / 臨床検査技師 5名 / 受付事務 8名
甲状腺に関係した各種メンタル症状の診察について
院長より診察のご紹介
甲状腺の関係では機能亢進症で躁(ソウ)、機能低下症でウツがみられることが多いものです。加齢と共に甲状腺機能も低下し、健忘症・認知症の症状も増加します。更に更年期症状として、あるいは青年期の妊娠・出産に伴って甲状腺機能異常が起こることも多く、これに精神症状を伴ってくることもあります。こういった甲状腺に関係した幅広いメンタルな症状を診て頂くこととなります。 現在のような長寿社会では不眠症も現代病の1つになってきており、この不眠症が認知症を増悪させる要因ともなります。この不眠症も甲状腺専門の武市院長と共に診て頂きます。井上先生は上記の認知症と共に、不安症(パニック)も専門とされています。 井上先生はセミパラチンスク(旧ソ連の核実験場)に何度も行かれ、セミパラチンスク医科大学では放射線被爆者の精神症状の講義も続けておられますので、原爆被爆者の方の精神症状、加齢に伴う精神症状も診て頂けると思います。
井上 顕 先生からのご挨拶
「うつかもしれない」と思い浮かぶことが大切!
4月から武市クリニックにて月2回診療いたします高知大学の井上と申します。どうぞよろしくお願いいたします。「精神医学、精神保健を中心とした公衆衛生学」を専門にしております。武市院長先生が長年にわたりカザフスタンのセミパラチンスク核実験場周辺住民に対する検診や講演活動をなされている中で、2013年より私も先生のグループの仲間に入れていただいています。 武市院長先生は身体疾患と精神症状の合併に関して両分野の専門的な対応の必要性を強く考慮されておられます。私も先生と同様の考えです。その第一歩が「うつかもしれない」という気づきを皆さんにしていただくことで、併存する他の疾患の発見にもつながり得るのだと思っています。下記にその側面からの3項目を記載してみました。何らかのご参考になりましたら幸いです。
診療において私が心がけていることは恩師の1人である貝谷久宣先生(現 医療法人和楽会理事長:パニック症・社交不安症を中心とした不安症やうつ病の専門医療機関)に教えを受けた「痛みをとる」ということです。身体の痛みという言葉があるように、こころの疾患にも痛みがあり、それは苦痛を意味します。 各々の現状と必要事項を理解することはもちろん、最善の治療と対応にて苦痛を少しずつでも取り除き、安心した生活を送れる一役となればと考えております。ぜひともお気軽にご相談いただけたらと思います。
「うつ」と「甲状腺機能障害」
甲状腺機能亢進症
主な精神症状は気分の変動です。強い不安やイライラ感を認めたり、躁状態・時にはうつ状態などを呈することがあります。
甲状腺機能低下症
精神症状においてうつ状態を認めることがあります。すなわち、うつ状態と甲状腺機能障害とは同時に治療をせねばならないこととあるわけです。広義に解釈すると、亢進症ではうつ状態ばかりでなく躁状態や不安等への対応が必要になる状況もあり得ます。身体科医と精神科医各々が甲状腺と精神症状の両対応をすることもありますが、専門性を考えると身体科医と精神科医が協同してこの治療にあたることが安心です。先述しましたように武市院長先生はその視点の重要性を以前から示唆されており、このたび武市クリニックにてその実施となる一助になれればと思っている次第です。
「うつ」と「認知症」
認知症は「アルツハイマー病による認知症」、「血管性認知症」、「レビー小体病を伴う認知症」、「前頭側頭型認知症」、「他事項による認知症」が挙がります。ここで「アルツハイマー病による認知症」と「血管性認知症」を取り上げてみますと、「アルツハイマー病による認知症」の方の約2割に軽度のうつ状態が存在すると言われています。また、「血管性認知症」は「アルツハイマー病による認知症」と比べてうつ状態の存在が高率であると示唆されています。「レビー小体病を伴う認知症」などもうつ状態を認めることがあります。 うつかもしれないと思うことで認知症の発見につながる可能性もあるのです。
「うつ」と「不安症」
不安症群には「分離不安症」・「パニック症」・「社交不安症」・「全般不安症」などが含まれています。 最近話題になっている「パニック症」をここでは述べてみます。「パニック症」は強い不安と様々な症状を伴うパニック発作(パニック発作)を繰り返し体験することで、再び発作が生じることを過度に心配(予期不安)し、また、発作の際に逃げられないような場所や状況を回避(広場恐怖)しようとする疾患です。「パニック発作」の生涯発生率は約10%、「パニック症」の生涯有病率は3%前後と言われています。「パニック症」における約3〜6割はうつ病や躁うつ病等を合併するとの示唆がありますし、不安症の何かの疾患をもつ患者さんにおけるうつ病の生涯有病率は約4割と示している報告も認めます。 したがって、うつかもしれないと思い浮かぶことでパニック症を含む不安症を気づくことにもなり得ます。
医師のプロフィール
院長略歴
現 高知大学教育研究部医療学系 臨床医学部門保健管理センター 教授・医学博士
その他
- 高知大学国際連携推進センター国際プロジェクト部門長
- 高知大学学生総合支援センター
- 高知大学 朝倉・小津・物部キャンパス産業医(精神担当)
- セメイ国立医科大学名誉教授(カザフスタン)
- 藤田医科大学医学部客員教授
- 群馬大学医学部非常勤講師
- 島根大学医学部嘱託講師