現在行っている武市クリニック(甲状腺)での甲状腺診療
原爆被爆者診療の経験も踏まえて(甲状腺の守備範囲は広い)
私の考えるヒトにとって大切な事は
武市クリニック 院長
医学博士
内分泌甲状腺外科専門医働ける・動ける力を維持しながらの加齢だと思っていまして、「年齢と共に低下する甲状腺ホルモンを補充し、低下によって起こる3大代謝病を中心としたエネルギー代謝を高め、体を動かし知能を使い、働きながら100歳まで収入を得る。そして110歳まで生きていくこと」。これを私は“甲状腺健康寿命の延長”と表現しています。健康寿命の甲状腺関係で最も大切な事は3大代謝病の1つである高脂血症です。脂肪(コレステロール)の過剰は、甲状腺ホルモン低下症で起こり、肥満と共に血管にたまると各臓器に影響を与え、脳梗塞、心肥大、心筋梗塞等、寿命に影響します。 さらに、今の時代に大切なことの1つは、青壮年期の出産数を増やすことですが、そのためには甲状腺ホルモン異常で起こる生理不順を治し、青年期と、壮年期の早め、に第一子をもうけて頂くことが大切です。思春期・青年期には甲状腺異常で起きる躁とうつ病(双極性障害)を他の精神的異常から鑑別して、不必要な長期の“精神安定剤や睡眠薬の使用”をできるだけ控え、生理不順に注意して頂くよう勧めています。安定剤、睡眠薬を若くから長期使用しているから、といっての妊娠を諦めて頂かないためです。 甲状腺と加齢・そして後述する他疾患との関係を知ると、「ヒトの健康と妊娠・出産・老化とアンチエイジング、健康寿命の延長に関して、“甲状腺の諸臓器に対する守備範囲の広さ”」が理解して頂けるものと思います。 (附-1)甲状腺の腫瘤(できもの)に気付かれた時、大事な事はまず癌か否かを穿刺吸引細胞診(穿刺診)で診断します。1.0cm以下だと殆どは手術せず経過観察をします。それ以上は手術になる事が殆どです。良性の腫瘤は「甲状腺に何かありますよ」というサインだと思って頂く事が大切です。甲状腺機能、年齢、症状を診て対処します。甲状腺の癌は殆どが経過の良いものですが、中には未分化癌のように命にかかわるものがあり、最初の診察での穿刺診が重要です。甲状腺腫瘤(癌)による反回神経の圧迫・浸潤は嗄声の原因となりますので、発声時間の延長や声帯の動きに注意します。 (附-2)「老化は首から始まる」 に関しましては、次回の武市(甲状腺)クリニックのホームページで説明したいと思います。
甲状腺の守備範囲は広い
広島大学で
1965年から1995年までの30年間、広島大学で甲状腺を中心とした甲状腺研修・診療を続けていました。その間ずっと甲状腺の外科・内科を学びましたが、その初期は江崎治夫教授から、後期は頭から足までの医師の養成をモットーとされる、特に腎移植、肝移植で高名な土肥雪彦教授から指導を受けました。この期間中には原爆放射能医学研究所の放射線誘発部門では“放射線発癌の病理”を、放射線医学総合研究所と米国ロサンゼルスのUCLAとワズワース退役軍人病院では“放射線免疫”と“加齢免疫”を学び、その中でヒトの寿命は遺伝子で110歳とされている事を知りました。帰国して免疫以上に甲状腺ホルモンが加齢に関与しているのではと考えるようになり、自分で“加齢甲状腺”と呼び、この診療を続けてきました。所属教室では上述しましたように甲状腺・副甲状腺・副腎・唾液腺・乳腺と共に肝臓・腎臓移植や血管外科、消化器(胃・腸)外科等の他臓器の患者さんを多く診ることができたため、“甲状腺とこれら他臓器との関係”を広く学ぶ事ができました。 その中で甲状腺癌と共に甲状腺内科診療の患者さんには多くの原爆被爆者の方がおられ、その患者さんが自分の子供、孫に放射線異常が遺伝しないかを心配され、気が付けば50組を超える家族の甲状腺も診ていました。
現在行っている武市クリニックでの甲状腺診療
(原爆被爆者の経験も踏まえて)
甲状腺ホルモンの基本的な作用は
食べ物(糖・脂肪・蛋白質)をエネルギーにかえる働きによるものです。この食べ物から得られたエネルギーで我々は成長、知能の発育ができ、筋肉を動かしての毎日の生活、汗を出しての体温調節、胃腸・心臓と循環系・肝・腎系機能、女性ホルモン機能、メマイ、体脂肪の増減、そして体の抵抗力の維持等、体の代謝機能をコントロールしています。主にバセドウ病に伴う甲状腺ホルモン過剰症状が、甲状腺機能亢進症で、主に橋本病(慢性甲状腺炎)に伴う低下症状が、甲状腺機能低下症です。
武市甲状腺クリニックは
1995年11月に開院しました。これまでに3万人近くの患者さんが来院され、うち2000人を超える人が原爆被爆者でした。その中にも甲状腺家族が含まれておりまして、これらの甲状腺診療情報から「甲状腺疾患診断フロー(主に甲状腺腫・甲状腺機能状態から―内科系を中心に―)」【社)広島市医師会臨床検査センター疾患プロファイル構築委員会・甲状腺担当・武市宣雄(2001.1.1)】を21世紀初頭に発刊できました。 上記委員会の協力で発刊できましたこの表は、経験してきた多くの患者さんの自覚症状と、得られた血液・エコー等の検診検査データを解析し、これを年齢別に若者から老人へと年齢を8段階に分け、さらに甲状腺機能を大きく亢進症と低下症に分けた上で診断名を記入した“年齢別甲状腺疾患診断法のフローチャート”と言えるものでした。 これを可能にしたものは、甲状腺関係の自己抗体(TRAb、TgAb、TPOAb)を含めた色々の血液検査法と共に、甲状腺とその中にできた腫瘤(できもの)の血流と血流量、硬さ等を調べる事ができる高機能の超音波カラーエコー診断装置の進歩で、高感度で正確な検査結果が得られるようになったからであります。今でもこのフローチャートを手許に置いて甲状腺診療を続けています。
甲状腺疾患診断フローこの「年齢別甲状腺疾患診断法」のフローチャートの特徴
この「診断フロー」での甲状腺の特徴を簡単に示しますと、 ①乳幼児期はクレチン病 ②小児期は急性化膿性甲状腺炎と学力低下(集中力低下による) ③思春期は女児の生理と思春期甲状腺腫そしてバセドウ病初期 ④青年期はバセドウ病と妊娠・出産後機能異常 ⑤壮年期は私の言う“バセドウ橋本混在型(同時性と異時性あり)甲状腺腫” ⑥更年期は甲状腺機能低下を伴う橋本病(慢性甲状腺炎)と更年期障害 ⑦準老年期は機能低下症著明な橋本病、 そして ⑧老年期は甲状腺萎縮を伴う機能低下症 の診断がベースとなっています。全体として女性特有の症状、疾患と深くかかわっています。
これら甲状腺ホルモン機能の“亢進症(特に若い頃)と低下症(特に年をとって)”を分ける大事なポイントは
①精神面では躁・パニックとうつ(両方を持つ状態が双極性障害) ②心・循環系では亢進症での動悸と頻脈、両者で起こる不整脈(機能亢進症では特に心房細動)と高血圧症、そして低下症での徐脈 ③微熱と寒がり ④多汗と皮膚乾燥 ⑤消化器異常として下痢と便秘、そして胃潰瘍と逆流性食道炎 ⑥体重異常(体脂肪の増減によるやせと肥満) ⑦肝機能異常としてGOT、GPT上昇と膠質反応上昇 ⑧両者で起こる生理不順・流早産と低下症による不妊 これに加えて ⑨バセドウ病では特に眼球突出(突眼症)や、ふくらはぎの痙攣、 ⑩橋本病では、3大代謝病としての高脂血症(と、これに伴う脳梗塞)、糖尿病・腎機能障害(痛風に注意)があり、加えて加齢に伴う筋力・精力の低下や、更年期症状・健忘症・認知症等です。
年齢別にとらえてみますと
①新生児と乳幼児期には先天性甲状腺機能低下症に伴う発育異常が、そして ②小児期から思春期にかけては体と知能の発育そして生理の始まりに重要で、 ③青年期には学業・仕事・運動に働く一方で、バセドウ病による躁とパニック、そして妊娠・出産に関与し、 ④壮年期には仕事、子育てに加えて、3大代謝病(高脂血症、糖尿病、高尿酸血症=痛風の原因)の始まりに関与します。 ⑤50歳からの更年期は機能低下に伴う閉経と、更年期症状(耳鳴り、イライラ、不眠、ほてり、冷え性、頭痛、のどの違和感、のぼせ、多汗等) ⑥準老年期には体力低下(筋力・精力低下)、うつ症状の亢進、消化管機能低下(逆流性食道炎、便秘)、最後に ⑦老年期の健忘症、認知症です。 準老年期からは体力を温存し“アンチエイジング”、“健康寿命の延長”に心がけ、体と心のバランスをとる事が不可欠となります。 甲状腺ホルモン異常は、各年齢層で色々な臓器症状とかかわり合い、それに注意して治療します。
まとめ
これまでの経験をベースにして、新しい感性から甲状腺機能異常の治療に取り組みます。それは、全身臓器との関連を見定めての甲状腺機能を正常に戻すこと、甲状腺機能状態に関係した3大代謝病と共に、精神状態、妊娠・出産、更年期をコントロールし、歳をとっても動き働き続ける事ができる、私の提唱する“甲状腺健康寿命の延長”、に尽くしたいと思います。 最後に日本の医学は急成長を続ける中で、山中教授のiPS細胞を中心として、遺伝子医学、免疫学が進歩し、これが老化と癌の医療に応用されるようになってきました。さらに細胞中のミトコンドリアで作られるエネルギーがヒトの細胞が働く最も大切なものであることも分かり、その点からは甲状腺の働きの中心であるエネルギーの産生能力を忘れてはなりません。これが老化を防ぐ非常に大切な働きと考えています。我々は10年長生きすることによって、このような最新治療も受けられる可能性が高くなります。その為にも、甲状腺の応用で長生きして頂ければと思います。
令和7年7月・記 武市クリニック(甲状腺)院長 広島大学大学院医系科学研究科・客員教授 教育本部全学教育統括部・客員講師
医師のプロフィール・クリニック内の様子
院長略歴
- 昭和43年3月
- 広島大学医学部医学科卒業
- 昭和43年4月〜
- 広島大学医学部附属病院研修医
- 昭和44年10月~
- 大阪市湯川胃腸病院勤務
- 昭和45年4月~
- 広島大学原爆放射能医学研究所(外科)診療研修医員 → 医員
- 昭和48年6月
- 広島大学原爆放射能医学研究所
(放射線誘発癌研究部門・病理)助手 - 昭和52年6月~昭和53年9月
- アメリカUCLA助手(Research Associate)
- 昭和53年10月~昭和55年3月
- 放射線影響研究所病理部来所研究員
- 昭和54年4月~平成7年10月
- 広島大学医学部附属病院・第二外科:医員 → 助手 → 講師
- 平成7年11月~現在に至る
- 武市(広島甲状腺)クリニック院長
- 平成11年7月~平成23年3月
- 広島大学非常勤講師
(原爆放射能医学研究所:疫学・社会医学研究分野)他 - 平成23年4月~平成29年3月
- 広島大学非常勤講師(教養教育本部)
- 平成24年10月~令和2年9月
- 島根大学医学部臨床教授
- 平成29年4月~現在に至る
- 広島大学客員教授(大学院医歯薬保健学研究科)→(大学院医系科学研究科客員教授)
- 平成29年4月~現在に至る
- 広島大学客員講師(教育本部全学教育統括部)
資格
- 昭和51年7月22日
- 医学博士(Ph.D.)
- 昭和63年~平成20年
- 日本内分泌外科学会評議員
- 平成2年~
- 日本消化器外科学会認定医
- 平成2年~
- 日本外科学会認定医
- 平成9年~
- 日本臨床外科学会評議員
- 平成21年~
- 日本内分泌甲状腺外科専門医
- 平成22年~
- 日本生涯教育認定医
- 平成27年~
- 日本外科学会専門医
- 令和2年~
- 内分泌外科指導医
- 令和4年~
- 日本臨床外科学会特別会員
- 令和7年~
- 内分泌外科登録認定医
表彰
- 令和6年8月
- 外務大臣賞受賞
所属学会
日本外科学会・日本臨床外科学会・日本内分泌学会・日本甲状腺学会・日本癌学会・日本病理学会・日本内分泌外科学会・日本放射線影響学会・日本消化器外科学会・日本臨床細胞診学会(広島県支部)
專門
甲状腺・内分泌疾患
著書
- ed by Takeichi, N. et al : The Chernobyl accident. Thyroid abnormalities in children, congenital abnormalities and other radiation related information. The first ten years. Nakamoto Sogo Printing Co., Hiroshima, Japan, 1996
- 江崎治夫,武市宣雄: 甲状腺の手術. 外科基本手術シリーズー 5, へるす出版, 1983.
- 武市宣雄ら:放射線被曝と甲状腺がん一広島、チェルノブイリ セミパラチンスクー. 広島・(株)渓水社刊 2011年
主要論文
- 武市宣雄ら:甲状腺以外の内分泌腫瘍. 原爆放射線の人体影響 1992, 放射線被曝者医療国際協力推進協議会編, 東京・文光堂刊 99-104,1992.
- 武市宣雄ら:E. 合併症の処置 1)反回・喉頭神経損傷, 1. 甲状腺手術に必要な反回神経・上喉頭神経の手術ポイント, 2. 反回神経損傷,麻痺時の対策. 内分泌外科標準手術アトラス, 東京 インターメルク刊 87-93 1992年
- 武市宣雄、佐藤幸男、他:チェルノブイリ原発事故被災小児の甲状腺がん 9年を経過する所で. 医学のあゆみ、 173:265-269、 1995.
- 武市宣雄:放射線被曝と甲状腺がん. 内分泌外科の要点と盲点. 第2版幕内雅敏監修,小原孝男 編,東京・文光堂刊:22-23, 2007.
- 武市宣雄ら:甲状腺癌中間リスク群の手術法と予後について 広島での1958年からの長期にわたる手術法の変遷の歴史とその術後10年生存率の研究から. 第123回日本外科学会定期学術集会抄録、548、2023
- Takeichi, N., Hirose, F., Yamamoto, H. Salivary gland tumors in atomic bomb survivors, Hiroshima, Japan. I. Epidemiologic observations. Cancer, 38: 2462-2468, 1976.
- Takeichi, N., Hirose, F., Yamamoto, H., Ezaki, H., Fujikura, T.: Salivary gland tumors in atomic bomb survivors, Hiroshima, Japan. II. Pathologic study and supplementary epidemiologic observations. Cancer, 52: 377-385, 1983.
- Ezaki, H., Ishimaru, T., Hayashi, Y., Takeichi, N. Cancer of the thyroid and salivary glands. GANN Monograph on Cancer Research, 32: 129–142, 1986.
- Takeichi, N., et al: Thyroid cancer: Reports up to date and a review. J Radiat Res, 32(suppl): 180-188, 1991.
- Takeichi, N., Dohi, K., Yamamoto, H., Ito, H., Mabuchi, K., Yamamoto, T., Shimaoka, K., Yokoro, K. : Parathyroid tumors in atomic bomb survivors in Hiroshima: Epidemiological study from registered cases at Hiroshima prefecture tumor tissue registry, 1974-1987. Jpn. J. Cancer Res, 82: 875-878, 1991.
- Takeichi, N., Dohi, K., Ito, H., Yamamoto, H., Mabuchi, K., Yamamoto, T., Shimaoka, K., Yokoro, K. : Parathyroid tumors in atomic bomb survivors in Hiroshima: A review. J. Radiat. Res. (Suppl.): 189-192, 1991.
- Takeichi, N., Satow, Y., et al: Current results and future studies in 1994: Chernobyl-related thyroid cancer in children. pp183~190. In, Nagasaki Symposium on Chernbyl: Update and future. ed. by Nagataki, Excerpta Medica, International Congress Series 1074, Elsevier Scince B.V., 1994.
- Takeichi. N. et al: Non-thyroid endocrine tumors. Effect of A-bomb Radiation on the Human Body: 113-120, Bunkodo Co., Ltd Tokyo, 1995.
- Takeichi. N. et al: Prognosis of thyroid cancers after operation: 728 cases in 1956-79 and 2000-05 (Hiroshima). The 80th Annual Meeting of the Japanese Cancer Association: 228, 2021.
- Takeichi. N. et al: Follow-up study of 198 operated primary thyroid cancers in A-bomb exposed group: Hiroshima. The 67th Annual Meeting of the Japanese Radiation Research Society: 111, 2024
クリニック内の様子
スタッフ
看護師 5名 / 臨床検査技師 3名 / 受付事務 6名
甲状腺に関係した各種メンタル症状の診察について
院長より井上先生のご紹介
甲状腺の関係では機能亢進症で(ソウ)、機能低下でウツがみられることが多いものです。加齢と共に甲状腺機能も低下し、健忘症・認知症の症状も増加します。更に更年期症状として、あるいは青年期の妊娠・出産に伴って甲状験機能異常が起こることも多く、これに精神症状を伴ってくることもあります。こういった甲状腺に関係した幅広いメンタルな症状を高知大学教授(精神科医)の井上先生に診ていただくこととなります。 現在のような長寿社会ではうつや不安(パニック)、不眠症などが現代病の1つになってきており、この不眠症は認知症を増悪させる要因ともなります。この不眠症も精神科医の立場から見ていただきますが、私も甲状腺の立場から精神症状の治療を共に診させていただくこととなります。井上先生はそういったことも専門とされています。 井上先生はセミパラチンスク(旧ソ連の核実験所)にも何度も行かれ、セミパラチンスク医科大学では放射線被爆者の精神症状の講義も続けておられますので、高齢になられる原爆被爆者の方の精神症状、加齢に伴う精神症状と共に認知症も診ていただけると思います。
井上 顕 先生からのご挨拶
「うつかもしれない」と思い浮かぶことが大切!
高知大学教育研究部医療学系臨床医学部門保健管理センター 教授
医学博士4月から武市クリニックにて月2回診療いたします高知大学の井上と申します。どうぞよろしくお願いいたします。「精神医学、精神保健を中心とした公衆衛生学」を専門にしております。武市院長先生が長年にわたりカザフスタンのセミパラチンスク核実験場周辺住民に対する検診や講演活動をなされている中で、2013年より私も先生のグループの仲間に入れていただいています。 武市院長先生は身体疾患と精神症状の合併に関して両分野の専門的な対応の必要性を強く考慮されておられます。私も先生と同様の考えです。その第一歩が「うつかもしれない」という気づきを皆さんにしていただくことで、併存する他の疾患の発見にもつながり得るのだと思っています。下記にその側面からの3項目を記載してみました。何らかのご参考になりましたら幸いです。 診療において私が心がけていることは恩師の1人である貝谷久宣先生(現 医療法人和楽会理事長:パニック症・社交不安症を中心とした不安症やうつ病の専門医療機関)に教えを受けた「痛みをとる」ということです。身体の痛みという言葉があるように、こころの疾患にも痛みがあり、それは苦痛を意味します。 各々の現状と必要事項を理解することはもちろん、最善の治療と対応にて苦痛を少しずつでも取り除き、安心した生活を送れる一役となればと考えております。ぜひともお気軽にご相談いただけたらと思います。
「うつ」と「甲状腺機能障害」
甲状腺機能亢進症
主な精神症状は気分の変動です。強い不安やイライラ感を認めたり、躁状態・時にはうつ状態などを呈することがあります。
甲状腺機能低下症
精神症状においてうつ状態を認めることがあります。すなわち、うつ状態と甲状腺機能障害とは同時に治療をせねばならないこととあるわけです。広義に解釈すると、亢進症ではうつ状態ばかりでなく躁状態や不安等への対応が必要になる状況もあり得ます。身体科医と精神科医各々が甲状腺と精神症状の両対応をすることもありますが、専門性を考えると身体科医と精神科医が協同してこの治療にあたることが安心です。先述しましたように武市院長先生はその視点の重要性を以前から示唆されており、このたび武市クリニックにてその実施となる一助になれればと思っている次第です。
「うつ」と「認知症」
認知症は「アルツハイマー病による認知症」、「血管性認知症」、「レビー小体病を伴う認知症」、「前頭側頭型認知症」、「他事項による認知症」が挙がります。ここで「アルツハイマー病による認知症」と「血管性認知症」を取り上げてみますと、「アルツハイマー病による認知症」の方の約2割に軽度のうつ状態が存在すると言われています。また、「血管性認知症」は「アルツハイマー病による認知症」と比べてうつ状態の存在が高率であると示唆されています。「レビー小体病を伴う認知症」などもうつ状態を認めることがあります。 うつかもしれないと思うことで認知症の発見につながる可能性もあるのです。
「うつ」と「不安症」
不安症群には「分離不安症」・「パニック症」・「社交不安症」・「全般不安症」などが含まれています。 最近話題になっている「パニック症」をここでは述べてみます。「パニック症」は強い不安と様々な症状を伴うパニック発作(パニック発作)を繰り返し体験することで、再び発作が生じることを過度に心配(予期不安)し、また、発作の際に逃げられないような場所や状況を回避(広場恐怖)しようとする疾患です。「パニック発作」の生涯発生率は約10%、「パニック症」の生涯有病率は3%前後と言われています。「パニック症」における約3〜6割はうつ病や躁うつ病等を合併するとの示唆がありますし、不安症の何かの疾患をもつ患者さんにおけるうつ病の生涯有病率は約4割と示している報告も認めます。 したがって、うつかもしれないと思い浮かぶことでパニック症を含む不安症を気づくことにもなり得ます。
医師のプロフィール
井上 顕 先生 略歴
現 高知大学教育研究部医療学系 臨床医学部門保健管理センター 教授・医学博士
その他
- 高知大学国際連携推進センター国際プロジェクト部門長
- 高知大学学生総合支援センター
- 高知大学 朝倉・小津・物部キャンパス産業医(精神担当)
- セメイ国立医科大学名誉教授(カザフスタン)
- 藤田医科大学医学部客員教授
- 群馬大学医学部非常勤講師
- 島根大学医学部嘱託講師
野宗 義博 先生からのご挨拶
医学博士自己紹介 2025年4月 のそう よしひろ ①氏名:野宗 義博 ②生年月日:1950年8月29日 ③最終医学校名:広島大学医学部 私は広島大学医学部を卒業後、がんの外科治療、化学療法、免疫療法に深い関心を抱き、広島大学原爆放射線医学研究所・腫瘍外科に入局しました。その後、広島市民病院、県立安芸津病院、安佐市民病院、広島済生会病院外科での経験を経て、島根県大田市立病院副院長として外科部門を再開し、医療の充実に努めました。 1986 年から3年間、米国南フロリダ大学医学部がんセンターに留学。 2012年4月からは島根大学医学部総合医療学講座教授、総合医療教育センター長として、医学生の地域医療研修の指導にあたりました。また、2019年4月からは広島国際大学健康科学部医療系学科教授および島根公立邑智病院参与を兼務し、消化器外科、甲状腺外科、乳腺外科を中心に地域医療に貢献してまいりました。同時に、アサヒ社会復帰訓練センターでは矯正医官としても活動しておりました。 さらに、30年以上にわたり、チェルノブイリ原発事故後の核被曝健康調査をベラルーシ(ミンスク大学病院)およびウクライナ(ウクライナアカデミー小児産婦人科)で継続して行い、カザフスタンではセメイ医科大学(外国人教授)としてセミパラチンスク核実験場による核被曝健康調査に取り組んでおります。また、多くの研修医を日本で指導してきました。福島原発事故の翌年からは、小児甲状腺検診にNPOいわき放射能市民測定室たらちねや茨城県関東こども健康調査基金団体にボランティア医師として参加しています。 これまでの取り組みが評価され、昨年には外務大臣表彰を賜り、天皇陛下主催の秋の園遊会にご招待いただくという光栄にも恵まれました。 今後も、これまでの医療経験と知識を活かし、AIを活用した最新医療情報とともに、地域医療に一層尽力していく所存です。どうぞよろしくお願い申し上げます 経歴 1977; 広島大学医学部卒業 1977; 広島大学医学部附属病院 原爆放射能医学研究所・外科・研修医 1979; 広島市民病院外科・研修医 1981; 広島大学・原爆放射能医学研究所・外科入局 1986; 広島大学・原爆放射能医学研究所・外科助手 1986; アメリカ合衆国・南フロリダ大学医学部免疫薬理学科・客員研究員 1989; 広島大学・原爆放射能医学研究所・外科助手・医局長 1990; 広島県立安芸津病院・外科部長 1992; 広島市安佐市民病院・外科部長 1994; 済生会広島病院・外科部長 2011; 島根県大田市立病院・副院長 2019; 広島国際大学医療系学部・教授〜公立邑智病院参与 現在; 2022; カザフスタン共和国セメイ国立医科大学名誉教授 2024; 北広島町千代田中央病院・外科 2025; 広島大学医系科学研究所大学院・健康生活科学・客員教授 私からのメッサージ ◆がんの外科治療から制がん剤治療の専門医から皆様へ 1)日本のがんの現状 ・2人に1人は一生のうちにがんにかかります。 ・3人に1人はがんで亡くなっています。 ・医学の進歩で治るがんも増えていますが、早期発見・予防が大切です。 2)日本人に多いがん(男女計) 1.大腸がん 2.胃がん 3.肺がん 4.乳がん 5.前立腺がん ※部位別では、男性は「胃・大腸・肺・前立腺」、女性は「乳・大腸・肺・子宮・胃」が多いです。 3)甲状腺がんの頻度 ・日本では甲状腺がんは比較的まれで、**全がんの約1〜2%**程度です。 ・女性に多く、女性のがんの中では10位前後に入ります。 ・進行が遅いタイプが多く、早期発見・治療で予後は良好です。 ◆がんの予防について 1)生活習慣病とがん 生活習慣病とがんの関係 生活習慣病とは、毎日の生活習慣が原因となって起こる病気の総称で、主に ・高血圧 ・糖尿病 ・脂質異常症(コレステロール・中性脂肪の異常) ・肥満 ・痛風(高尿酸血症) などがあります。 これらは直接がんになるわけではありませんが、長く続くと血管や体の細胞に負担をかけ、がんの発生リスクを高めることが分かっています。 例えば、 ・肥満 → 大腸がん、乳がん、肝臓がんのリスク増 ・糖尿病 → 膵がん、肝がん、大腸がんのリスク増 ・高脂質血症 → 胆のう・肝臓のがんリスク増 ・高血圧 → 腎がんなどのリスク増 生活習慣(食事・運動・飲酒・喫煙)を整えることは、生活習慣病とがんの両方の予防につながります。 2)生活習慣病と甲状腺疾患の関係 甲状腺の病気(バセドウ病・橋本病・甲状腺がんなど)は、生活習慣病と直接の原因関係はありません。しかし、次のような間接的な関係があります。 1.生活習慣病があると甲状腺治療に影響する ・糖尿病や高血圧があると、手術や薬の治療中に合併症のリスクが高まります。 ・脂質異常症は、甲状腺機能低下症の時に悪化しやすいです。 2.甲状腺機能の異常が生活習慣病を悪化させる ・甲状腺機能低下症 → コレステロールや中性脂肪が上がりやすい ・甲状腺機能亢進症 → 心拍数増加や不整脈、高血糖になりやすい 3.共通する生活習慣の影響 ・過剰なヨウ素摂取(昆布などの海藻の大量摂取)は甲状腺機能に影響することがあります。 ・喫煙はバセドウ病眼症の悪化要因になります。 まとめ 生活習慣病と甲状腺病は「直接は別の病気」ですが、互いに症状や治療に影響しあうため、どちらも適切に管理することが大切です。



